日本人男性の平均寿命は年々右肩傾向に上がり、厚生労働省が発表した簡易生命表(令和2年)では、2020年の時点で81.64歳を記録しています。ちなみに女性は87.74歳と約6歳ほど上回っていますが、それでも男性の平均寿命も世界的に見ればかなり高いといえます。2021年に発表されたWHOの統計によるランキングでは、日本人が第1位でトップです。

次いでスイス、韓国にシンガポールの順でアメリカは40位、中国は48位に位置します。2019年の男性の平均寿命と比べると、1年で0.23年分寿命が延びています。寿命といえばこの平均寿命ですが、似ている言葉の健康寿命とは定義や意味が異なります。前者は0歳における平均余命のことで、0歳から数えて平均して何歳まで生きられるかという定義です。
対する後者は、健康に問題が起こり制限されることなく日常生活を送ることができる期間と、定義されています。つまり、同じ寿命であっても平均と健康は定義が異なり、意味も違ってくるわけです。日本人の健康寿命は、厚生労働省の2016年のデータによると男性が72.14歳、女性が女性が74.79歳です。これらの数字から分かるのは、男性は平均して80歳以上に生きられますが、健康的に過ごせるのは70代前半までということです。
女性も晩年の10年以上は健康的に過ごすのが難しく、身の回りの助けが必要になるか、介護生活に入ることが窺えます。平均と健康、そのどちらも寿命が延びているわけですが、差があるのは確かですし、老後について1人1人が真剣に考える必要があることが分かります。余談ですが、寿命が延びているのは栄養や公衆衛生、医学といった点で改善が見られるのが理由です。免疫力の問題がなく、衛生的で病気になっても治療が受けられる、そういう改善とその努力の結果が長寿命化だと考えられます。
しかし、寿命が延びたことで新たな問題に直面しているのも確かです。それは健康寿命が平均寿命よりも大幅に短く、老後に自立した生活を送るのが難しいという現実です。当然ながら年を取れば怪我をしたり病気がちになりますし、ひと度医療機関のお世話になれば入院、通院で医療費が掛かります。入院も通院も若い頃と比べて日数が長くなりますから、それだけ医療費の負担が大きくなることになります。気持ちは若くても肉体的な老化は避けられないので、体も頭も健康で自由に動けるうちに生活習慣を見直したり、老後のことを考えて資産形成に取り組む必要があるでしょう。